その昔、カウンセリングの実習を受けていた頃「沈黙」について指導を受けましたが、臨床経験が浅いころは、この沈黙の時間と向き合うことはとても難しく感じていました。
日常会話の中にある沈黙では「間」にあたるでしょうか。
間の取り方が得意な人、間が待てる人、待てない人。
例えば、相談をされた場面で相手が黙り込んだら、どこか気まずさを感じて気持ちを先取りしたり、気の利いた一言でも言ってあげようと、ついこの「間」を破ろうとしてしまいがちです。せっかく相談してくれたのだから何とか早く力になってあげたいという心情が働きますものね。
一方、カウンセリングの沈黙とはどのようなものでしょうか。
カウンセリングでの沈黙は、本人の心が動く貴重な時間と捉えて、カウンセラーは「沈黙を尊重する時間」としてじっくり向き合います。
カウンセリングでは沈黙は頻繁に起こり、5分10分の沈黙は珍しくはありません。
私が経験した中では30分の沈黙が最長です。
セッションが60分ですから半分の時間は会話が生じなかったということになりますが、セッション後「じっくり聴いていただきありがとうございました。」とその方は言われました。
じっくり聴くというのは、待つことでもあり、心の水面下のプロセスは確実に動いていると尊重する時間でもあります。
私は「少し待ちますね」と声をかけるようにしていますが、今思うと、自分に向けた言葉でもあるのかもしれませんね。
さて、一例ですが沈黙にはいろんな種類があります。
- 自己洞察している沈黙
- 内容を整理している沈黙
- 深い部分に差し掛かった沈黙
- 言葉や思いに詰まる沈黙
- 戸惑っている沈黙
この見極めは非常に難しいので、非言語的(ノンバーバル)部分、行動面にもしっかり目を向けていきます。
戸惑っている沈黙の場合、ここはカウンセラーの頑張りどころですね!
言葉になりづらい思いに耳を澄ませ、サポートができるよう努めていきます。
沈黙を経て自分とじっくり向き合われた後のクライエントというのは、心の中を模索して新しい何かを見つけ出します。
気づきやヒントや方向性であったり、答え、決意、覚悟であったり。
これはカウンセリングの不思議なところですね。
このように、カウンセリングでの沈黙はひとつの大切な場面です。
クライアントに寄り添い、見立て、沈黙を活かし、沈黙を待つこと。
「居心地の良い沈黙」になるよう、経験を重ねながら深めていきたいと思います。
カウンセリングを受ける側も、お気兼ねなくじっくり自分と向き合ってくださいね。
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