今すぐにでも楽になりたくて、解決を望んで、でも問題はそんなに簡単ではない。
胸が苦しくて、どのように心を保って良いかわからない日もあって、ひたすら耐え忍ぶ日もある。
以前、継続中のクライエントさんから1枚のハガキとお手紙が届きました。
※本人が特定できない配慮のもと内容を書いています。
届いたそのハガキはいただきもののようで、いわゆる応援メッセージのようなポエムが印字されていました。
一見前向きな言葉ではあるけれど、当時の彼女はその言葉を目にすることが辛くなってしまったそうです。
添えられていた便箋には「一方的ではあるけれど、手元に置きたくない為貰ってください」そう書かれ、そして苦しくどうしようもない思いが少しだけ綴られていました。
この1枚のハガキには彼女の「手放したい」というメッセージが込められてたように思います。
今抱えている問題を手放したいけど手放せない悲痛な思い。
時が経っても色褪せることがなく、どんな努力をしても手放せない苦痛。
何年もカウンセリングでお会いし続けてきましたが、停滞する現実に「ちっとも良くならなくてすみません。」それが彼女の口癖になっていました。
でも、このハガキは自ら手放そうと思い、わたしに送ることで手放すことができた。
これまでにない彼女の行動の中に変化を感じました。
わたしはその思いに応えたく、次のカウンセリング日に手紙のお返事をしました。
実のところ、返事を書くのに何日も要しました。
書いては消し、書いては消してを繰り返しました。
最初は、いただいたポエムのように、ちょっぴり粋で、気の利いた言葉が良いであろうと、それっぽく言葉を見つけていたのですが、完成してみると何か違う。
いや、むしろ違和感しかない。
きっと彼女はこんな言葉はちっとも望んではいない。
危うく、わたしがわたしの自己満足で終わるところでした。
カウンセリングの予約日。セッションが終わりの時間に近づいた頃、お返事のハガキを1枚お渡ししました。
彼女はこのハガキを見て号泣しました。
何度も何度も嬉しいと言葉にしました。
渡したハガキは、いつも彼女が大事に持ち歩いている手帳のカバーの内側に収められました。「大切にします」とまた涙を流しました。
あれから数年、新しい手帳を新調する度に、渡したハガキは移動されていました。
「お守りのように大切にしていますよ」とにっこりと笑って。
何年もの間「ちっとも良くならなくてすみません」と彼女は言ったけれど、カウンセリングで最も大切なことは、問題を見つけてあげることでも解決してあげることでもなく、問題を2人のものとして抱えて、答えが出ない時間を共有し、辛さを共に耐える時間があるということだと思います。
そうそう、わたしがお返事したそのハガキの言葉ですが、考えた時間とは反して至ってシンプル。
「大きく深呼吸」と一言書いたのでした。
ポエム作家のような粋な言葉でもなければ、励ましでもなく、応援メッセージでもない。
ただ、その当時の彼女が苦しくならない言葉であり、そして苦しいときに見てホッとできる言葉を探していたらこうなりました。
何だか気の利かない言葉ですみません、そう手渡したことを今でも鮮明に覚えています。
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