「カウンセリングにはやがて終わりがあり、その終わりを「終結」と呼ぶ」
以前にこのような記事を書いたことがありますが、カウンセリングの終結とは、すべてを終わりにするという意味ではなく「一旦終了」または「第一章の終わり」など一区切りとして「卒業」と表現されます。
長く通われている方は、不安や分離の痛みが生じやすいので、例えば、回数券をご購入の方は、1回分をあえて残した状態で卒業をされる方が多いのも、この卒業の意味に託す思いの表れなのかもしれません。
先日、4年2ヶ月定期的に通われていた方が卒業されました。
初めてお会いしたのは2018年の秋、精神科の臨床心理士さんの紹介でお見えになりました。お会いした印象は今でも鮮明に覚えています。
相談内容は正直解決しづらく、足したり引いたり、割り切れない思いに試行錯誤をする日々でした。
しかし、1年前よりようやく問題解決への糸口を掴み始めて、数回前にはそろそろ終結が近づいていることを互いに意識しはじめていました。双方で話し合い、今日を最終日に当てようとなり最後のセッションがはじまりました。
50回ものセッションを重ねたカウンセリングシートは、バインダーに収まり切れなく厚く膨れ上がり、共に歩んだ歴史は感慨深いものでした。
この4年間を振り返るということは容易なことではない為、当時からの主訴である4つの問題を丁寧に確認する時間に当てました。
ところが、問題をひとつずつ見ていくと、すっきり解決したものはひとつもありません。
では、未解決なのになぜ互いに終結を意識しはじめたのか。
それは対処能力です。
問題を排除することはできなかったけれど、自ら問題をコントロールする対応力を身につけたのです。
問題は消すことはできない。ではどうしたらいいのか。
認知的視野を広げることで捉え方に変化が生じ、こうした認知の変化が進む中で、苦痛が緩和し次第に気持ちが開放し、自分で自分をケアできるようになっていたのですね。
ここまで来たらもう大丈夫。
ここに辿りつくまで多くの時間を要しましたが、決して遠回りではなく人生において大切な時間であったことだと思います。非常に忍耐強く向き合いました。向き合う中で「受け流す」術も磨かれたのだと思います。
また、現時点でどのような課題が残っていて、今後どんな対処ができるのか、未来の自分が困らないように話し合いました。
このクライエントさんは、カウンセリングが終わりの時間に差し掛かるころ、熱心に「まとめ」のメモをとるのですが、最後の日もその姿に変わりはなく、ノートの半分がぎっしりと文字で埋められました。
お客様の声を頂戴しました。
コツコツとそしてゆっくりと時間をかけながらも自己洞察が進んだこと、ご自身の内面に変化を感じられたことは伴走者として心理士冥利に尽きる思いです。
※クライエント様の許可を得て掲載しております。内容は特定されないよう配慮しています。
カウンセリングを検討されている方のご参考になれば幸いです。
コメント